エピソード7 カルパスの覚醒

遠い昔はるか銀河の彼方で・・・

卑劣な香港料理は倒した。しかし直後に発ったLAでまた苦難が待ち受けていた。大軍で攻めてくるアメリカ料理(?)に対してなすすべはなく、ハンバーガー、ブリトー、ピザの大量摂取で腹を下す毎日が続いたのだった。

 それに加え、昼から飲み、部屋でも飲み、飛行機でも飲み、朝起きても飲むという、ビール三杯で死ぬ美濃部には耐えられないほどのアルコールを摂取し、胃にさらなるダメージを蓄積していた。

 無事アメリカから帰り、追いコンも経て安心する美濃部だったが、ダメージを蓄積した胃に、密かに、確実に忍び寄る小さな肉影にはまだ気付いていなかった•••

~3/31(金) 歌広場高田馬場店~
三橋「固い絆に〜思いを寄せて〜」

中岡「語りつくせぬ〜青春の日々〜」

学生として正式に最後の日。俺たちはカラオケに来ていた。そして俺の手元には、楽しみたい思いから購入に至ったストロングゼロとビールの缶があった。

中岡「赤い〜スイートピ〜〜〜 いやー三重野さんいないからようやく松田聖子気持ちよく歌えるわ〜」

三橋「いよ!ご本人!」

時間はまだ17:00。14:00からフリータイムで入っているから、3人でもう3時間くらい歌い続けていることになる。酔いも回り、おつまみが欲しくなり、机の上を見渡すと、三橋が買って来てくれたカルパスが置いてあった。

三橋「あなたのその唇が〜じれったいのよぉ〜〜      ハァ」

中岡「きゅん」

みんなが歌っている間にカルパスを食べていた。うまい。しかし小さい。一つ食べるとまたすぐに一つ欲しくなる。

三橋「be ambitious〜」

中岡「わがともや〜冒険者よ〜」

自分の番以外で歌を聴きながら、俺はカルパスを狂ったように頬張り続けた。酒はもうないのに、カルパスだけが消費されていき、気づけば俺の目の前には大量のカルパス包装ビニールが散乱していた。

そうこうしているうちに楽しいカラオケは終わった。そして異変に気付いたのは、二次会の飲み屋に向かっている時だった。なにやらお腹が痛い。何か悪いものでも食べただろうか。

すぐにおさまるだろうと思ったので、そのまま店へ向かった。しかし道中で、戦争の舞台が口内から、胃の中に移ったことを確信していた。

店に着く。全く腹痛がおさまる気配はない。思わずバナナミルクを頼む。学生最後なのになんて言ってられる余裕はない。戦況は悪化していた。先ほどは鈍痛だったはずが、キリキリと痛み出した。まるで胃の中を定期的に斬り付けられているような痛みだ。

やがてその場にいたゼミ生が思い出話、噂話、薫話をしだしたが、全く聞ける余裕がないほどの痛みが襲い始めた。こんな渋い顔をするのは香港でシューマイ食べたら中にエビ入っててえづきそうになった時以来だ。

周囲の人がキャベツや水を勧めてくれる。藁をもすがる思いの俺は、ソースもつけずにウサギのようにキャベツをかじり始めた。顔が必死すぎて周囲の人からすれば正直怖かったと思う。しかし痛みは増すばかりで、俺の顔からはどんどん余裕がなくなっていった。

ゼミ生が思い出話に花を咲かせる中、俺は体内に交信を取った。
美濃部「こちら体外。体内、何が起きているか報告せよ」
胃「こちら胃、大きな炎症が起きて、食べ物が通るたびに激痛を生む。至急救援を願う。」
肝臓「こちら肝臓、処理できなかった大量のアルコールに襲われている。このままではやられてしまう。至急救援を願う。」
十二指腸「こちら十二指腸!胃で消化されずに逃走したいくつかの食物が暴れてうわ何をするやめ」ピー

覚醒したカルパス「いよぉ大量摂取、ありがとうな。おかげで大暴れさせてもらってるぜぇヘッヘッヘ」

大変なことになった。忘れていたが、小さいとはいえどカルパスも肉だったのだ。このままでは体内が全てカルパスに支配され、また肉を排除するベジタリアンへと逆戻りしてしまう。そう頭を抱えていた時だった。

中岡「大根、じゃがいも、卵」
美濃部「..?」

中岡「胃に優しい食べ物たちだ。今おでんを頼んでおいた。彼らがきっとお前の危機を救ってくれることだろう。では、カルパスと共にあらんことを..」

どこかで聞いたようなセリフを言い残し、また彼女は会話に戻っていった。そしてその直後、おでんが到着した。俺に向けてということなのだろうか。激痛の最中、俺はおでんの中の大根に最後の希望を託した。一口。二口。三口。大根を食べ続けた。これで痛みが引かなかったら惑星に帰ろう。すると..

美濃部「痛みが、引いていく・・!」
胃「こちら胃、大根に含まれるアミラーゼが炎症を修復してくれた模様、戦況回復。消化活動を開始します!」
十二指腸「こちら十二指腸、大根効果がこちらにも効き始め、カルパスを消化吸収しました。」
カルパス「くそおお」シュワァ

胃「援軍の卵、受け取りました。タンパク質の吸収を開始します!」

こうして素晴らしい戦士たちの活躍で、無事胃は通常の機能を取り戻したのだった。これからも良胃(いい)やつと悪胃(わるい)やつの戦いは続くだろうが、たとえどんな肉がでようとも、どんな苦手な食べ物がでようとも、彼ら戦士がいる限り平穏は続くだろう。めでたしめでたし。

-MEAT WARS 完-
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