遠い昔はるか銀河の彼方で・・・
卑劣な香港料理は倒した。しかし直後に発ったLAでまた苦難が待ち受けていた。大軍で攻めてくるアメリカ料理(?)に対してなすすべはなく、ハンバーガー、ブリトー、ピザの大量摂取で腹を下す毎日が続いたのだった。
それに加え、昼から飲み、部屋でも飲み、飛行機でも飲み、朝起きても飲むという、ビール三杯で死ぬ美濃部には耐えられないほどのアルコールを摂取し、胃にさらなるダメージを蓄積していた。
無事アメリカから帰り、追いコンも経て安心する美濃部だったが、ダメージを蓄積した胃に、密かに、確実に忍び寄る小さな肉影にはまだ気付いていなかった•••
中岡「語りつくせぬ〜青春の日々〜」
学生として正式に最後の日。俺たちはカラオケに来ていた。そして俺の手元には、楽しみたい思いから購入に至ったストロングゼロとビールの缶があった。
三橋「いよ!ご本人!」
時間はまだ17:00。14:00からフリータイムで入っているから、3人でもう3時間くらい歌い続けていることになる。酔いも回り、おつまみが欲しくなり、机の上を見渡すと、三橋が買って来てくれたカルパスが置いてあった。
中岡「きゅん」
みんなが歌っている間にカルパスを食べていた。うまい。しかし小さい。一つ食べるとまたすぐに一つ欲しくなる。
中岡「わがともや〜冒険者よ〜」
自分の番以外で歌を聴きながら、俺はカルパスを狂ったように頬張り続けた。酒はもうないのに、カルパスだけが消費されていき、気づけば俺の目の前には大量のカルパス包装ビニールが散乱していた。
そうこうしているうちに楽しいカラオケは終わった。そして異変に気付いたのは、二次会の飲み屋に向かっている時だった。なにやらお腹が痛い。何か悪いものでも食べただろうか。
すぐにおさまるだろうと思ったので、そのまま店へ向かった。しかし道中で、戦争の舞台が口内から、胃の中に移ったことを確信していた。
店に着く。全く腹痛がおさまる気配はない。思わずバナナミルクを頼む。学生最後なのになんて言ってられる余裕はない。戦況は悪化していた。先ほどは鈍痛だったはずが、キリキリと痛み出した。まるで胃の中を定期的に斬り付けられているような痛みだ。
やがてその場にいたゼミ生が思い出話、噂話、薫話をしだしたが、全く聞ける余裕がないほどの痛みが襲い始めた。こんな渋い顔をするのは香港でシューマイ食べたら中にエビ入っててえづきそうになった時以来だ。
周囲の人がキャベツや水を勧めてくれる。藁をもすがる思いの俺は、ソースもつけずにウサギのようにキャベツをかじり始めた。顔が必死すぎて周囲の人からすれば正直怖かったと思う。しかし痛みは増すばかりで、俺の顔からはどんどん余裕がなくなっていった。
覚醒したカルパス「いよぉ大量摂取、ありがとうな。おかげで大暴れさせてもらってるぜぇヘッヘッヘ」
大変なことになった。忘れていたが、小さいとはいえどカルパスも肉だったのだ。このままでは体内が全てカルパスに支配され、また肉を排除するベジタリアンへと逆戻りしてしまう。そう頭を抱えていた時だった。
中岡「胃に優しい食べ物たちだ。今おでんを頼んでおいた。彼らがきっとお前の危機を救ってくれることだろう。では、カルパスと共にあらんことを..」
どこかで聞いたようなセリフを言い残し、また彼女は会話に戻っていった。そしてその直後、おでんが到着した。俺に向けてということなのだろうか。激痛の最中、俺はおでんの中の大根に最後の希望を託した。一口。二口。三口。大根を食べ続けた。これで痛みが引かなかったら惑星に帰ろう。すると..
胃「援軍の卵、受け取りました。タンパク質の吸収を開始します!」
こうして素晴らしい戦士たちの活躍で、無事胃は通常の機能を取り戻したのだった。これからも良胃(いい)やつと悪胃(わるい)やつの戦いは続くだろうが、たとえどんな肉がでようとも、どんな苦手な食べ物がでようとも、彼ら戦士がいる限り平穏は続くだろう。めでたしめでたし。