第二章 眼鏡を外して~山の女と海~

「せーのっ、海だーーー!!!」

みたいなことはしなかった。

そんな若々しさは捨ててきた。むしろ。

「暑い……死ぬ……」

これは某氏のインスタに書いてあって初めて知ったことだが、沖縄の紫外線量は本土の4倍あるらしい。

そんな中、真っ白な砂浜の上で「ビーチパラソル設置お断り(使いたければ金払え)」「海の近くに陣取るな(陣取りたければ金払え)」システムに拘束された我々は、海から遠い砂浜の端で直射日光を浴びながらビニールシートを敷くよりほか無かった。某高級ホテルのビーチだから仕方ない。おかげで数人の携帯電話が「高温注意」で瀕死状態になったが。

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このビーチに着いたのは水曜日の昼前。前日については、昼頃に那覇空港に到着し、そのまま国際通りを見て回って牛丼屋くらい安いソーキそば屋で沖縄初飯を食べたことや、コテージの外装が思ってた数倍ボロかったけど内装はなかなかいい感じだったこと、コテージの近くの海に私服で行き、結局内山以外はほぼずぶ濡れで帰ってきたこと、BBQをしようと思ったらガス欠で結局ホットプレート大会になったことなど、そこそこリア充っぽく楽しんだが(ネタにしずらいので)省略。

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さて、どんなにキラキラ感の薄れ老いた四年生でも、やはり美しい沖縄の海にはドキドキ☆ワクワクしてしまうものである。準備の出来た者たちから、次々と海に向かって突進し始めた。……一人を除いては。

神谷。山を愛し山に愛された女。男でも悲鳴を上げるような岩岩した急な山道を、彼女はいとも簡単に、息を切らすことなく登ってゆく。小柄な体格ながら、彼女の身体的・精神的強さは誰もが認めるところだ。そんな神谷の天敵は、海。「前世、海で死んだかもしれないレベルで海が怖い」らしい。なんでも得体の知れないものが海底にいるように思え、海藻は女の人の長い髪のように思えてしまうとか。

そんな神谷と海で楽しく遊ぶために出動したのは水を愛し水に愛された男、マーメイド内山。彼は陸上競技ではポンコツの類だが、水中では誰にも負けない人魚力を発揮する。人ひとり寝ころべるサイズのボード型浮き輪に寝転がる神谷と、彼女を乗せ沖へ沖へと引っ張って行く内山の姿は、馬車と馬車馬さながらだ。

海は明るい水色の場所と、色の暗い場所とにはっきりと分かれていた。暗い場所は海の底にビッシリと海藻が生えており、ふわふわしたものが足に絡みついてきて大変気持ちが悪い。

ちょうど足が海底につくかつかないかくらいの場所で、我々は無謀にもビーチバレーを始めた。勿論皆、自分の両手が届く範囲でしかボールを拾うことが出来ないため、パスは3回も続きはしなかった。

加えて波に流されるボールを捕まえることがなかなか難しい。飛ばされすぎたボールを追っかけて必死で泳いだところ結局砂浜までたどり着いてしまった愉快な菊地さんを沖から眺めて爆笑するという最低な後輩たちにキレることなくまたボールを持って泳いで来てくれた菊地さんにまじで感謝。

我々河野ゼミ7人は持てる限りの英智を結集し「ビーチバレーはもっと浜辺でやるべきだ」という結論を導き出すに至った。

結局3時間程度泳いだり水遊びをしたりを繰り返し、我々は次の地へと旅立った。その数時間の間に、神谷は見事、海への恐怖を克服することが出来たのであった。

 

~山谷の感想~
「目が悪くて女子の水着姿をはっきりと拝むことが出来なかった……俺は未だかつてこんなにも自分の乱視を恨んだことは無かったよ」

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