第四章 夏の世の夢(前編)~山谷肉事件~

別に沖縄でする必要はないが、大学生としてコテージに泊まったからにはついついやりたくなってしまうこと……それはBBQ。

本当は前日にしようと思っていたがガス欠のために出来なかった。その日は朝から内山幹事が管理会社に電話をかけ、対応ガスボンベを手に入れるという準備っぷりだったため、早川肉曹長もご満悦だ。

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焼きには早川肉曹長、山谷二等肉士が交代で入った。美味しい肉が焼ければ焼けるほど彼らは昇格し、反対に、焼網の目が荒いため、火の中に肉を落としてしまうほど降格する。

BBQも後半戦。

「このソーセージ、まじで美味しい……!」

ドン・菊地の一言で、早川はとうとう肉幕僚長にまで昇り詰めた。

肉幕僚長に追いつけ追い越せ。山谷肉士長も骨付きチキンを焼く。

「鶏肉は火が通りにくいから、よくよく焼いた方がいいよ」

と、髙川料理長。

しかし山谷肉士長は、早く食らいつきたく痺れを切らしたのか、料理長の助言もそこそこに、肉を皿に上げ出した。

「まあ、けっこう焼いたし、大丈夫だろう」

パリパリの皮にふっくらとした身。見た目はとても美味しそうだ。皆で焼きたてチキンにかぶりつく。山谷肉士長の昇格も目前と思えた。しかし。

「おい山谷!!鶏肉の中、めっちゃ赤いぞ!!どういうことだ!!」

早川肉幕僚長から怒号が飛んだ。

「本当だ、これ、生焼けだよ!」

神谷海兵隊員も持っていたチキンを放り出す。

すると山谷肉士長、黒田洗濯長以外は皆、ほんの少し口をつけたばかりの肉を皿に置いた。

「だ、大丈夫です!ほんの少し赤いくらい、食べられますよ!」

必死の形相で訴え、二本目の肉を手にした山谷肉士長に、皆白い目を向ける。未だ食べ続ける黒田洗濯長も、面倒だからと口を挟まない。

「山谷、お前は降格などしない。解雇だ!」

内山幹事の言葉が、無職山谷の胸に重くのしかかった。

落ち込む山谷を横目に、早川肉幕僚長は呆れ顔で、皆の食べかけた肉を焼き直した。

 

その夜……

「やまやあああああああ!!!!!あいつのせいでえええええええ!!!!」

早川肉幕僚長は何度もトイレに駆け込むこととなった。

 

~山谷の感想~
「コーラを買ったから、髙川さんに振ってもらいたい」

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