俺たちのバケーション:2日目

「わん、べあーずはんど、あんど、わん、ほっとこーひー、ぷりーず」

英語での注文慣れてますよ、て感じで、聞いたこともない名前のパンとコーヒー(もちろんブラック)を注文。「熊の手」パンはその名の通り大きく、これぞアメリカン!と気取って食べてみたが、濃いラズベリーの風味は残念ながら純・日本人の口には合わなかった。コーヒーは出てこなかった。

「ホットコーヒーって和製英語なんだよね。Coffeeって言ったらホットのことみたい」

そう言うふみかの手にはきちんとIced coffeeとおいしそうなパンが。ちゃんとしてるなあ。落胆しながら店員さんに「わん、かっぷ、おぶ、こーひー」と注文すると、チッと舌打ちされ、バンと叩きつけるように出された。真夏のホットコーヒーは熱すぎて殆ど飲めなかった。

私たちが泊まっていたホテルは、左隣にABCマート、右隣にカフェがあり、とても便利。せっかくだから朝ごはんはカフェにで食べようと、昨日のうちに女子の間で話していた。

「おはよう」

なぜか一人で内山到着。

「黒田、ふみか、昨日は飲まなかったし、今日はつぶれるんだよな?」

ちなみにこの旅行中、こいつは十中八九これしか言わない。どれだけ女の子をつぶしたいんだ。菊地さんのことをキチクと呼ぶ割に、お前きちくすぎやしないか?

寝ぼけ眼をこすりながら内山の言を華麗にスルーすると、程無くして女子3人組も到着。殆どパジャマのままの私やふみかと違い、既に水着を着こみ、化粧も完璧。南国に似合いのホットパンツやリゾートワンピを身に付け、頭にはお花が咲いている。かわいい。美しい。これぞ異国に来た醍醐味!

さあ我々も準備をしなければ。

グアム二日目はビーチでマリンアクティビティーをする予定。夏休みにも沖縄に行き、散々海で遊んだが(前回ブログ参照)、今回は乗り物を乗りまわしてキャーキャー騒ぐ系。なんだろう、言っちゃ悪いが似合わぬリア充感。まずグアムとかいうキラキラ大学生ご用達スポットに来てしまったこと自体、間違いだったのかもしれないが。

ふみかと部屋へ戻る。洗面所で歯を磨いていた時、

「あっ!!!」

部屋から叫び声が。駆けつけると、前身を布で隠しただけのセクシーふみかが呆然としていた。

「ど、どうしたの?」

微妙に恥ずかしくなってしまい、その姿から視線をそらしながら問いかける。すると、ふみか自身信じられないと言うように、か細い声が。

「……水着のひもが、切れちゃった」

「……???」

水着のひもが切れる?なんで?

私が瞬時に意味を呑み込めなかった理由は、話せば長くなる。温かい目で読んでほしい。私の考える水着とは、まな板に凹凸という名の「空洞(無)」を出現させるための道具であり、自身・道具にかかる力は常にゼロである。したがって、自由でありたいとする「中身(存在)」を、押さえつけ、縛ることで、自身・道具両方に負荷がかかるなどという発想は、皆無だったのだ。

「どうしよう、これじゃあ今日、海に入れない……」

「私の水着を使ってよ!!!」

考える前に声に出していた。ふみかが水着を着られない、ふみかの水着姿を見られない。それは、本旅行一の損失。絶対に阻止しなければならない。

「え、でも、まゆはどうするの?」

「私は……」

着ていたTシャツをめくり「無」に目をやる。

「大丈夫!水着なんかで押さえつけられる私じゃないわ!」

日本人カップル一組と車に揺られること数十分(色気とか何も感じられないうるさい八人と一緒で仲良くしゃべり合うことも出来なかっただろう、かわいそうに)、ビーチに到着。自己完結型ノリツッコミグアムおじさんの楽しい説明後、まずは海に入る。

女子はかわいい系、セクシー系、スポーティーなど、それぞれ自分に合った水着を着用しており、最高に眼福。ふみかには半ば無理やり私の水着を着せた。水着も、私なんかに着られているより嬉しそうだ。

菊地さんは、現地で買った派手なオレンジ色の日焼け止めを、これでもかというくらい全身に塗りたくっていた。沖縄での反省を見事生かしていらっしゃる。

そういえば、まりは海恐怖症で、沖縄でもその片鱗が見えていたが、どうなったのだろう。よく知らないが、誰より勢い良く海に突進していっていった。

アナウンスで「ウチヤマサマ」と呼ばれ、集合場所に向かう。最初のアクティビティーは水上スキーだ。私はもちろん、皆未経験。二人組になって前方の人が運転、後方の人が前方の人につかまる。自転車二人乗りみたいな感じ。正方形型に「浮き」があり、その外側を何周か運転する。

私のペアは菊地さん。とても上手な運転で、物足りなくなったので「もっと速く!」と急かしてみたり。

途中で運転を交代。

あれ、思ってたより重い……。

ハンドル部分が重すぎて、思う方向に曲げることが出来ない。相当な腕力が必要だ。それ右手にあるアクセルを押すとハンドルがぐらぐらと動いて、まっすぐ運転出来ない。

こんなに難しかったのか……。菊地さん茶化してごめん。

ここで私の運転下手が発動。転倒するかもしれないという緊張のため、指先に力が入る。アクセルが押され、いきなりハイスピード。焦ってもっと力む。エンドレス。

「うおっ」と後ろから声がし、菊地さんが完全に浮いたのがわかった。

菊地さんは、命の危険を感じてか、見守る方針を転換。

「いいよいいよ~、ゆっくりね」「そうそう、少しずつハンドルを右に~」「少し左に寄ってるよ~、ハンドルをゆっくり右に傾けて~」

菊地さん、良い教官になれると思う。

 

他のペアはというと、私は自分のことに一生懸命で正直殆ど見られていない。聞いたところによると、

・まりとふみかは運転上手。二人とも水上バイクが似合う。

・内山、かっこつけてカーブをハイスピードで曲がろうとしたところ、後ろの栗ちゃんを振り落す。

・奥ちゃん、運転が下手すぎてコーチのお兄ちゃんにチェンジ通告を受ける。山谷が代わりに運転。

といったところ。やっぱりなって感じだ。

次はパラセーリング。こちらも二人一組で、パラシュートを着てボートに引っ張ってもらう。私は内山とペアになった。

内山が後ろ、私が前でバックハグのような形になるのだが、全っ然ときめかない。それは内山も同じようだ。お互い、次は彼氏彼女と来ような。

パラセーリングといえば、パラシュートで高くまで飛んで風を感じる楽しみ方のはず。なのに出発後、全く浮かびあがらずに二人そろって海にドボン。陸から大分遠ざかっていたこともあって水が冷たい。着用していたものに水が染み込み、重くなる。え?これ失敗したんじゃ?もう浮かべなくない?

結局海水でずぶ濡れにされてから天高く持ち上げられ、普通に寒かった。が、何ということでしょう。海がとってもきれい。実家の見慣れた瀬戸内海とは違い、真っ青なのだ。加えて高いところが大好きなまゆちゃんはその高さに大興奮。ボートとつながっている紐が揺らされ、丁度良いスリルも味わえちゃう。テンションは最高潮に達した。

ボートに戻って苦笑いした内山が一言「黒田うるせえ」。

最後はバナナボート。今までスリリングなアクティビティーが続いてきたんだから、最後はよほど凄いんだろう。と思いきや。

「…………。」

私たちのボートは静まり返っていた。

ぬるい。

バナナ型のボートに乗り、取っ手を掴んで引っ張りまわされるのだが。何というか……全く危険を感じられない。スリルがない。なんなら両手を離して乗ったって、何の支障もない。

今までの疲れもあり、私たちは無言でバナナの上で引っ張られ続けていた。自分たち、馬鹿みたいじゃね?

途中でもう一組のバナナボートに手を振る。あちらのボートはとても盛り上がっているようで元気に手を振り返してくる。なぜ?メンツの問題?確かにこちらのボートには、どちらかというと落ち着いている人が集まっている。私にもっと盛り上げ力があれば……!心の中でそう叫びながらも、声を発せない自分がいた。弱い。

 

引っ張り続けられること約十分。長い旅が終わった。ボートから下りてもう一組と合流。

「いや~~今日一死ぬかと思った!」

と内山たち。え???

どうやらあちらのボートは「本当のバナナボート」だったようで、本気で振り落しに来ていたらしい。それはバーを掴む皆の腕が筋肉痛になるほどに。

だから私たちとすれちがった時は、振り落されるかもしれないというリスクを冒しながら、必死に片手を離していたらしい。

私たちのボートの皆は「いいな~~」と羨ましがった。

その後は、みんなで海で遊んだり、ハエと戦いながらBBQ肉を食べたり。そんな感じ!内山の言いなりになんてならない!夜も誰も潰れなかったよ。楽しかった!学生最高!

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